●たとえ悲しくて悔しくて眠れない夜があったとしても:PYPの学びの4要素をどうやって実現するか。








フランソワーズ・サガン
「たとえ悲しくて悔しくて眠れない夜があったとしても、
一方で嬉しくて楽しくて眠れない日もある人生を、私は選びたい。」



こんにちは、開智望小学校準備室広報担当の野口です。
いつも開智望ブログをご覧いただきありがとうございます。
このブログでは、毎回開智望小学校の教育について紹介しております。


・3学期の探究が始まりました。

2年生の子たちは、日々熱中して、自分事で、チャレンジな学びを
探究活動の中で行っています。



学校の中をワークシートや付箋を持って縦横無尽に駆けまわり、多くの発見と
熱い議論を交わしています。


だんだんとthinking toolの使い方にもなれて、
何も教員が言わなくても考える時にマインドマップやYチャートを使い出すという
嬉しい誤算も見られます。




しかし、私が子どもの頃に受けた教育、そして、今の学校で多く行われている教育は、
本当に子どもたち自身が熱中して、自分事で、チャレンジングなものになっていた(いる)のでしょうか。

ずっと、このことについて考え続けています。




こんな光景を見たことがあるのではないでしょうか。

クラスの一部で行事を行っていて、何となく熱が入らない。
先生や部活のコーチだけ熱くなっていて何となく温度差がある。

いっしょうけんめいやっている人と大きなギャップを感じることが誰しも1度や2度あるはずです。


また普段の授業でも、教員が一方的に話しつづけ、なぜこれをやっているのかがわからない。


そんな光景です。


以前も何度か当ブログでお伝えしてきましたが、
PYPでは学びがこう定義されています。

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個々の探究の単元―セントラルアイデア(教科の枠を超えたテーマが学年・学齢に合わせて具体化・特殊化されたもの)をめぐって組織された―
を発展させる上で、次のものが使いやすい基準としてあげられる。すなわち、それぞれの単元は次のようなものであるべきである。

Engaging

Of interest to the students, and involving them actively in their own learning.

魅力       

児童・生徒にとっての関心、児童・生徒を活動的に学びに熱中させること。

Relevant

Linked to the students’ prior knowledge and experience, and current circumstances,
and therefore placing learning in a context connected to the lives of the students.

関連       

児童・生徒の既得知識や経験とリンクしている、現在の状況、したがってまた、
児童・生徒の生(生活・生き方・生きていることそれ自体)と関連する状況の中に学びを位置づけること。


Challenging

Extending the prior knowledge and experience of the students to increase their competencies and understanding.

挑戦       

児童・生徒の既得知識と経験を広げ、彼らの能力と知性を増加させること。


Significant

Contributing to an understanding of the transdisciplinary nature of the theme,
and therefore to an understanding of commonality of human experiences.

重要性     

テーマの教科の枠を超えた本性の理解に寄与すること、したがってまた、人類の経験の普遍性の理解に寄与すること。


参照:Making The PYP Happen 翻訳 K・KITAMURA
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キーワードは、熱中・関連・挑戦・重要性(PYPの学びの4要素)です。


この4つが子どもの心に発動し爆発する時、主体的に学べるようです。


私たち開智望小学校が考える学びの4要素の発動方法はこんな条件があると思います。

条件1 年間を通して考える
条件2 困った時こそ学ぶ時
条件3 カオスを恐れない

と、ここまで読んでもイメージが伝わらないと思いますので、具体的に書いていきたいと思います。

(※以下は、『失敗学のすすめ』 (講談社文庫) 畑村 洋太郎 (著) を参考にしております。)


4月、新しいクラスが始まりました。
最初の学級会で学級委員や各種リーダーが決まります。

自分から立候補した子もいれば、推薦で選ばれた子、教員から指名された子もいます。

そして、時間をかけて学級目標を立てます。

もちろんPYPの学校を目指すので、Learner Profile IBの学習者像を念頭に入れます。

話し合いの中で「Inquirers 探究する人」「Risk-takers 挑戦する人」「Reflective 振り返ることができる人」
をいったん選ぶことに決まりました。

1)春のエクスカーション

最初の行事は遠足です。学級委員を中心に行き先から、遊びの仕方、どんな植物を観察するかを話し合い計画を立てます。
「べつにどこでもいいし」
「俺は絶対にドロケイをやりたい」
「おやつは500円までですか」
「バナナはおやつですか」

お決まりのまとまらない話し合いです。

でも、教員は、一切口を挟みません。当然、子どもたちは何となくで春のエクスカーションを迎えました。

しおりがないから、忘れ物をする子が続出。
途中で雨が降り、びっしょびしょの子も居ます。

学校に帰ると、保護者からクレームが入ります。

「先生、なんでこんな風に、春のエクスカーションは十分な準備ができていないんですか」
「あなたは責任を放棄しているのですか」

といった内容です。



実は、保護者会がこのタイミングでありまして、
年間の細かいプランや子どもにどう力をつけるかという方法、
そして子どもの主体性を醸成するためにあえて上記のようにした、
ときちんと伝えます。


2)球技大会

子どもたちは春のエクスカーションで「なぜ失敗したのか」を考えます。

しかし、この時点ではまだまだ真剣に話すのは少数です。

大多数の子たちは、受け身の姿勢。

と、その時1人の女の子が「球技大会に勝ちたい」と言います。

そして放課後、教員の所に来ました。

「先生、球技大会でドッジボールで勝ちたいのですが、どうすればいいですか」


教員は「この本を読んでみれば」と言います。

その本は図書館にあるドッジボールの戦略本です。

大人向けの本を渡された女の子はお家に帰り、お母さんに読めない漢字の読み方のききながら
必死に内容を読み、国語の時間に習った表のまとめ方を使ってみんなに資料をわたしました。


しかし、クラスの子たちは分かってくれません。

「なんでお前はそんなことをするんだ」
「俺はドッジボールよりもサッカーしたいし」


そして、球技大会の日。

なんとか予選を勝ち上がるも決勝トーナメントで1回戦負け。

本気(マジ)になった女の子は泣いています。大号泣です。

「どうして先生は私たちを助けてくれなかったのですか」こう責めています。
まわりのお友だちも「先生のせいだ」と責めてきます。


クラスを見渡すと、何人かの男子たちが気まずそうな顔をしています。


3)運動会


今度は秋の運動会です。今度はある男の子が絶対に優勝したい、と思っています。

球技大会で頑張った女の子は、すっかりやる気をなくして休み時間に図書館で本を読んでいます。


そして、話し合いが始まりました。

「わたしたちはエクスカも球技大会も失敗しました。どうやら先生はやる気がなく、このままでは運動会でも勝てないと思います。」
「どうすれば勝てるのか誰か意見はありますか。」


「春のエクスカでは持ち物が洗い出されていなかったから、よくなかった。もっと準備をすべきだよね」
「球技大会では練習不足だった」

こんな話し合いの中から、必要なことをクラスで考えました。


そして担任教員は、探究の時間でスキルの話をします。

歴史の偉人たちも最初は失敗だらけだったんだよ。
それでも、最後には成功した。

そして、彼らの共通点はこんなスキルだ。


まず、計画。そして自己管理。さらには他者を尊重すること。考えることが1番大切だ。


子どもたちは運動会で勝ちたいから、真剣に話を聞き、

偉人たちの話を自分たちの物語に変換しています。


こうして仮想失敗体験をしながら、他のところから得た知識も結集し、
練習をして臨んだ運動会。



結果は惜しくも準優勝。

熱血体育教師のクラスに負けてしまいました。
そのクラスは先生の指導でがっちり練習をして、僅差で勝利のトロフィーを勝ち取ったのです。



「こんなに頑張ったのにダメだった」「なぜなんだ」
「先生はやっぱりあてにならないね」


4)秋のエクスカーション


さて、今度はエクスカーションです。


これまでたくさんの失敗を経験した子どもたち。

授業でも主体的に教員に意見する場面も増えました。

自分たちで経験し、考えることにも慣れたようです。


エクスカーションでは、春に失敗した女の子が再起します。


前回の反省を受けて、今度はみんなが楽しめるようなテーマを考えたい、そう言って話し合いが始まります。


「行き先はどこがいいですか。」
「その前に何を身につけたいか考えようよ」
「今やっている勉強で、学校では体験できないことがいいんじゃない」


教員は「よしよし、子どもたちが自分ごとになってきたな」
そう話し合いから感じるのでした。


そして、しおりを自分たちで作成し、
行き先の博物館に自分たちで電話をし、
バスまで自分たちで用意してしまいました。


バスレクでも、普段目立たない子たちが「なぞなぞ」を出して大いに盛り上がっています。



<「Inquirers 探究する人」「Risk-takers 挑戦する人」「Reflective 振り返ることができる人」
これを念頭においてエクスカーションを計画してごらん>

教員の一言で意見を出し合った子どもたち。

エクスカーションの当日は、

みんなでとても楽しい1日を過ごすことができました。

「このクラスは失敗ばかりだったけど、ここでようやくみんなで笑えた気がする」

そんなことを帰りのバスで一人の子が教員に向かって話しています。


5)望発表会(エキシビション)(仮称)


さて、クラスで最後の行事です。

ここまで来ると子どもたちが話し合う質も二次関数的にレベルアップしています。


「どうせ今回も先生は何もしてくれないから、自分たちで表現の台本作らない?」
「衣装はどうする?音楽も何がいいかな?」
「あの先生、パソコンだけは得意だから、教えてもらおうよ!」

こうして放課後まで残って、時にはお家の人に叱られながら自分たちで立派な劇を完成させました。


しかし、当日。


「表現の劇の最中に、音楽がストップ。」

予想外の事態に劇が止まってしまいました。

前半はよくできたものの、後半はグッダグダです。


なんとかやりきった子どもたちも、その後の教室では何人かが涙。



音響を担当していたのは、学級委員をしている男の子。

運動会やエクスカーションでも責任を十分に果たしていた彼。

人一倍責任感が強い彼は号泣をこらえ、必死に座って
ドラッカーの『マネジメント』を読んでいます。


教室では彼を責めようとする人は誰もいません。

「お前のおかげでここまで来れたから責めないよ」
「今まで楽しいクラスを作ってくれてありがとな」


子どもたちは、こうしていろいろなことを身につけたのでした。




いかがでしたでしょうか。


わたしの稚拙な文章では上手く伝えられない部分もあったかと思いますが、

こうしたプロセスを経れば子どもたちは、 熱中・関連・挑戦・重要性(PYPの学びの4要素)を体感するはずです。


条件1 年間を通して考える
条件2 困った時こそ学ぶ時
条件3 カオスを恐れない


この3つで、上記のような体験をぜひ子どもにさせたい!
そう感じていただけたのでしたら、ぜひ2月の説明会にご参加ください。


それではまた、来週お目にかかりたいと思います。