●探究型の社会科の授業を、どうやって小学生低学年向けに行うのか?

こんにちは、開智望小学校広報担当の山崎です。
いつも開智望ブログをご覧いただきありがとうございます。
このブログでは、毎回開智望小学校の教育について紹介しております。

4月を迎え、いよいよ開智望小学校が開校します。


どんな学びが繰り広げられるのか、教員一同わくわくしています。


それに先立ち、3月28日には、入学者、転入者向けの説明会が行われ、真新しい校舎に子どもたちの楽しげな笑い声が響きました。

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さて、説明会は10時から始まったのですが、9時半ころから参加される保護者の方と子どもたちが集まってきました。

子どもたちは正面玄関の受付で色のついた名札をもらうと、それぞれの教室に分かれていきます。



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私は教室に世界中の国々を紹介する英語で書かれた本と地球儀をおいて子どもたちを待ちました。

5人ほど集まったところで、全体に声をかけました。

「少しだけ「社会科」の勉強しようか」

そして英語の本を開きます。



「みんな知ってる国ってある?」

「うーん・・・アメリカ」

「中国!」

やはりアメリカや中国が出てきます。

子どもたちにとって「国」という言葉は、やはり「外国」とつながって認識されることが多いようです。
自分の生活圏を相対化してみるのはなかなか難しいものです。
 ※アメリカのページでは、砂漠に書かれたサソリの絵を見てみんな「サソリがいる!」などと驚いていました。

「みんなが住んでる国はなんていうの?」

「日本!」

これは5人全員答えることができました。

そこで、次に日本のページを開いてみました。

「みんなが住んでる町はどのへんなのか」や、私の出身地(長崎)を探してみたりして一通り日本の情報を出し合った後で、
「ちょっと中国とくらべてみようか」と投げかけてみました。

この時には、教室に集まった子は7人ほどになっていました。

7人それぞれが意見を言い合います。服装、食べ物、動物、植物、地図に書かれた情報を漏れなく比べていきます。
そしてある子が「日本は大きな島」であることに気が付きました。
そして、中国の地図に戻ると中国は「大きな島」ではなくてたくさんの国と隣接していることに気が付きました。

「それぞれの国には「国境」ってよばれる線があるんだよ。日本のまわりに線がないのはなんでだろうね?」

「海があるからだよ!」

「じゃあ地球儀で見てみようか」

地球儀で見ると一目瞭然、日本は海で隣国と隔てられています。

さてここで社会科的知識が入ります。

「こういう海とか「自然にある大きなもの」でわけられた国と国の境目を自然的国境って言うんだよ。
自然的国境にはほかにどんなものがあると思う?」

「山とか森?とか?」

「そうだね、それに川も自然的国境になることが多いんだよ。地球儀でフランスを探してごらん。ヒントはヨーロッパにある国だよ」
 ※地図の本には初めに大陸の区分が示されており、子どもたちはそこを見てヨーロッパを探していました。

「ここ!」

「そうだね!この地球儀は山がちゃんとその形ででこぼこしてるから世界中の大きな山が触るとわかるんだよ。富士山を探してごらん」

「ほんとだ!」
「でこぼこしてる!」

子どもたちは楽しそうに地球儀をさわり世界中の主要な山、山脈を見つけていきます。

「さっき見つけたフランスにも山があるけど・・・」

「自然的国境!!」

私が話すよりも早く子どもったちは先ほどつけた新しい知識を使っていきます。



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一通り山を見つけ終わった後、本で日本の次のページを開いてみました。

英語の本なのでJapanの次はJordanでした。
こどもたちは目を丸くしてヨルダンの地図を眺めます。

「先生、まっすぐの線でできた国だ!」
「まっすぐの国!」
「かくかくの国!」

子どもたちは国境線に注目してそれぞれの感想を述べ、全体では「かくかくの国」と呼ぶことになりました。

こどもたちは、地球儀を回しながら他に「かくかくの国」がないか探し始めました。

「かくかくの国がたくさんある!!!!」
 ※エジプト以南のアフリカ諸国を見つけてみんな大興奮でした

「まっすぐの川や山がたくさんあるのかな?こんど調べてみようよ」


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気づけば教室にいるみんなが地球の置かれた机の周りにあつまっていました。

短い時間の中でも子どもたちは、海で囲まれた国や山で隔てられた国などの自然国境を持つ国をたくさんみつけました。

そしてヨルダンのような直線で隔てられた国もたくさんみつけました。

特に直線で隔てられた国の衝撃は大きかったようで嬉しそうに「かくかくの国」といって探していました。

「みんなでその秘密を探ってみよう!」

と図書スペースに駆け出したい気持ちを抑えて、時間が来たので、この短い「社会科の勉強」は終わり、次の活動に移りました。

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さて、この短い時間の中でも子どもたちはしっかりIBプログラムにある学びを行っています。

例えば、地球儀で国を探す時に子どもたちはヨルダンに代表される「かくかくの国」のような国境線の特異さに注目して自ら問を内在化し対象にあたっています。

これはIBの提唱するコンセプト・ベースドな学びです。この場合は8つのコンセプトのうちFormで問いを立てていると言えます。

 ※IBプログラムでは対象を調査する際にただ調べるのではなく8つのキー・コンセプツ
【Form(特徴、構造)、Function(機能・役割)、Causation(原因・理由)、Change(変化・変容)、
Connection(関連・影響)、Perspective(視点・視野)、Responsibility(主体・責任)、Reflection(評価・省察)】

を基本にした「概念主導型のカリキュラム(concepts-driven curriculum)」が推奨されています。

これは、例えば社会科などでたびたび見受けられるように、「暗記型」に陥ってしまいがちな学校教育において、
その教科領域にのみ「有用」な知識の獲得を目指すのではなく、教科横断的に応用可能な概念(コンセプト)の獲得を目指したものです。これらの概念(コンセプト)は、様々な場面で応用可能であり、
探究活動や普段の授業の中で問いを立てる際や、対象の観察を行う際に子どもたちの学びを推し進めます。

今回のこの短い「社会科の勉強」であれば、国境線をFormで分類したのちに、次はそのCausationをベースにした問い
(たとえば「どうしてまっすぐな国境線がひかれたの?」や「フランスとスペインの国境の決められ方と、
北アフリカ諸国の国境の決められ方の理由ってちがうのかな?」)で探究的に進めるとすれば、

子どもたちはそれまで得た知識を総動員して、比較や分析を行い、
国境の決められ方やその背景にある19世紀、20世紀の歴史にたどり着くことも可能でしょう。


また、この概念(コンセプト、例えばForm)を理科に応用すれば、子どもたちは簡単に単子葉類と双子葉類の分類を行うでしょう。


このようにIBプログラムでは、子どもたちはトピックを学びつつ知識を積み重ねていくと同時に、
それだけに埋没するのではなく、6つ教科融合テーマを年間通して探究していく中で概念的な思考法を身に着けていきます。

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3月28日に真新しい校舎の小さな教室で子どもたちが見せた好奇心と探究心に驚かされたと同時に、
開智望小学校の開校がますます楽しみになった30分でした。