【コーディネーター便り】入学式後の1週間を終えて

(以下は、学校通信の原稿の抜粋です。)

理事長補佐の北村です。開智望小学校の教育のコーディネーターの仕事をしています。

職員室にいないときは、各教室で学びの様子を見ているか、C-1のホームルームの正面の部屋で仕事をしています。いろんな注文ばかり出す役割なので、教師諸君には敬遠されています。

「学校通信」の書面を用いて、開智望小学校の学びや各クラス・子どもたちの様子、皆さんにお願いしたいことなどを書き綴っていくことになります。あらためてですが、よろしくお願いします。

さて、授業が始まり、第1週目が終わらんとしています。
月曜日に体育館でアイスブレークをしていたときの子どもたちの様子から昨日の様子までを振り返ってみると、大変大きな変化が見られました。
月曜日のアイスブレークでは、「とりあえず」ここは学校であることや隣にいる子どもたちがどうやら自分の仲間だろうということはわかるのですが、これから果たして何が始まるのか、新しい仲間とどうかかわっていたったらいいのか、自分は何をしたらいいのか、まだ自分たちがここで何をするのかということに対する不安や戸惑いと、なにか楽しい学びが始まりそうだなあという期待とがみんなごっちゃになって、表情に表れていました。幾人かは、新しい環境に対する興奮から体育館を走り回っていました。
その後、アイスブレークと地球環境の動画を大きなスクリーンで見て感動しみんな一斉に「ワーッ」という感動の声を上げ、これからの学び対する期待と大変強い好奇心に胸を膨らまし興奮している子どもたちの様子を後ろから見ていて、私は少し、胸にこみ上げてくるものがありました。
「さあ、この子どもたちが今週の学びの中でどう変化していくか」。
私も期待に胸を膨らましていました。
今月の目標は《学びの仲間の相互理解と学びのコミュニティー作り》です。これを具体的には、「�@学校生活の基本的な姿勢を学ぶ、�A学校を発見する、�B学びの基本的な姿勢を身につける」です。それぞれのクラスの学びの中で、これらの目標に子どもたちは、どのくらい、どのように近づいたか、それをこの稿で振り返ってみたいと考えます。


まず、「�@学校生活の基本的な姿勢を学ぶ」についてです。

・「ルール作り」
月曜日には、「学校発見」を行うときや「トイレ」「更衣室での着替え」で、大騒ぎし、走り回っていた子どもたち。・・・私たちは、この日は、「危ない!」というとき以外は、あえて注意をしませんでした。まあ、「いざ」というときに備えながらも子どもたちの自由にさせていたということです。
さて、火曜日。この日の1時間目は、「学校生活についての知識の獲得」です。各クラス、「学校の危険に対してどうするか」「仲間割れに対してどうするか」「あいさつ」「座り方」「集合」「持ち物」等についての「知識」を子どもたち自身の持っている「先行知識」を用いて「作り上げる」という学びを行いました。
五木田君は、大変面白い実験をしました。
子どもたちと一緒に五木田君は廊下に出ます。五木田君は発泡スチロールの箱を手にしています。何をするのでしょう?
子どもたちを座らせて、五木田君は発泡スチロールの箱を胸の前に両手でかざし、柱の角に向かって歩いていきます。ぶつかりました。発泡スチロールの箱は割れません。次に、五木田君は、やや早足で歩き、胸の前にかざした発泡スチロールの箱を柱の角にぶつけました。箱は割れ、破片が飛び散りました。
五木田君は、子どもたちに問います。「もしこの発泡スチロールが人だったら、どうなるだろうね。」
子どもたちは、答えます。「ケガをする。」「骨が折れる。」・・・・
五木田君は、さらに子どもたちに問います。「じゃ、君たちはどうしたらいいんだろうね。」
子どもたちは、答えます。「廊下を走らないようにすればいいんだ。」「きまりにしればいい。」・・・・こうして、「廊下は走らないようにしよう。」という「きまり」ができました。
子どもたちは、こういう探究活動を通して、「きまり」「ルール」を作っていきます。同時にこれは、「きまり」「ルール」というものと「人」との関係を理解することでもあります。
こうして、自分たちの作ったルールを一時的に守り始めました。これは、子どもたちが社会性を獲得していく一プロセスです。
しかし、やはり「元気な1年生」です。すぐにこのルールは破られ、廊下を走る子どもたちが増え始めました。なぜでしょう。「元気だから」ということだけが原因ではありません。みなさんもその理由を考えてみませんか。


・「『考える人』が掃除をすると?」
2年生は、子どもたちと山崎君(通称「てっちゃん」※教師に対して「先生」という呼称を、私は用いません。教師も子どもたちと同様に学習者であると考えていますので)が、火曜日より国際バカロレアの「10の学習者像learner profile」の探究をやっています。「ガリレオ裁判」のアニメをBENQ(電子黒板)で見ています。子どもたちは夢中になっています。でも、これだけだと少しも「探究の学び」ではありません。
そこで、・・・・大きな模造紙が用意されました。子どもたちは、グループごとに話し合い、そこに、考えてみたい人物の名前を書きました。「ガリレオ」「王様」「小さなねずみ」「年寄りのねずみ」と書いてあります。
次に、山崎君は、子どもたちに、それぞれの人物のところに「国際バカロレアの10の学習者像の中から、一つずつ選んで、ポストイットに、その理由も一緒に書いて、貼り付けてみよう」という指示を出しました。
ガリレオのところには、「考える人」だとか、「探究する人」が当然張られていますが、「信念ある人」も貼られています。「年寄りのねずみ」のところには、「思いやりのある人」、「小さなねずみ」のところには「心を開く人」が貼られました。
おや、ガリレオを有罪にした「王様」のところにも「信念ある人」が貼られています。子どもたちは、当然、疑問を持ちます。「どう違うんだろう?」・・・・これは、私たち大人の言葉で言うところの「信念ある人principled」と「頑固・頑迷な人 stubborn」との違いについての議論に発展していきます。
さて、水曜日、「掃除」についての「探究」は、大変面白いことになっていました。子どもたちが、「ガリレオのように『考える人』が、掃除をするとしたら、どんなことをするのだろうか?」というテーマで議論していたのです。いや驚いたの何のって。大人でもこんなことを考える人はあまりいないでしょうな。・・・・この子どもたちは、すごい! 私は、びっくりの連続です。・・・では、どういう知識が得られたか? それは、今後のお楽しみです。


・「�B学びの基本的な姿勢を身につける」について
昨日(木曜日)の探究は「学びの基本的な姿勢」・・・「concepts」を用いて対象を捉える、「skillsを使って調べたり、コミュニケーションしたりする」ということを目的にした探究です。テーマは「学校や学校にかかわる人をfunction(働き)から理解しよう」です。
子どもたちは、事前にfunctionに関連する質問を準備して、久保田副校長、食堂の黒木マネージャー、関東鉄道守谷駅の駅長さん、養護の後藤先生、英語のジョン先生のところに、質問しに行くという計画を立てています。これは、conceptを使って考える能力を高めることとresearch skillsのなかのcollecting dateやrecording dataや、communication skillsを意識的に利用して、これから始まる探究の単元や各教科の学びで使っていけるようにしようという計画です。野口君のクラスは、そのためのルーブリック(目的と評価基準)を子どもと野口君の間で共有し、最後に振り返りと自己評価と相互評価を行う計画です。
1年生の子どもたちは、functionよりも、form(特徴・外見)の方に目が行ってしまうようです。この点、さすがに2年生はたいしたもんですな。
三島さんのクラスでは、子どもたちが副校長の久保田先生について考えています。「久保田先生は、私たちの質問にニコニコして答えてくれたよ。」「優しい人なんだよ。」「ニコニコしながら、僕たちの質問の答えをゆっくり考えていたよ。」「わかった。『考える人』なんだ。」「だから、みんなのことをよく考えてくれるんだね。」「だから、副校長先生なんだよ。」
こういうふうに、form(特徴・外見)の方にから見ていくうちにだんだんfunctionに深まっていっています。「知識」がいきなり「本質の知」になるとリアリティーを欠いたものになってしまいます。確固たる知、本当に子どもたちにとって大事な知とは、見たまま、感じたままの実感の伴ったものでなければなりません。そういう点で、子どもたちは、実感を伴った経験から大変うまくfunctionという「本質」に発展させていました。


・「振り返り」の大切さ
さて、最後は野口君のクラスの学びです。今日は、昨日の探究のプレゼンテーションです。
2クラスまとまって、互いのプレゼンテーションを聞きあう形になります。野口君のクラスは、発表の仕方や聞き方をcommunication skillsのpresentingやlistening、social skillsのなかのrespecting othersやcooperatingを用いて形成していく第一歩として取り組み、そのためのルーブリックを子どもたちと野口君との間で共有しました。
大変リサーチスキルの使い方やコンセプツの使い方はよかったのですが、楽しいせいでやや興奮気味の子どもたちがいるため、プレゼンテーションを行っている子どもたちの声が聞き取れないところがありました。どうするのかなと思っていましたが、30分後、野口クラスの中を覗くと、・・・・・・。
振り返りです。先ほど撮影したプレゼンテーションの動画を見ながら、「さて、今、○○君が、『駅長さんが何で駅長さんになったのか』について説明しましたが、みんな、聞こえたかな?」。あの時、興奮してちょっと騒いでいた◎◎君は、恥ずかしいのかな、耳をふさいでいます。野口君は、特に子どもたちに説諭しているわけではありません。子どもたちは自分たちの様子を撮影した動画を見て、ルーブリックを使って自己評価しています。でも、それが深いところでの振り返りや成長につながります。
この5日間、月曜日から金曜日までの間に、目に見えるように子どもたちは変化しました。正直なところ、私自身、驚いています。入学式では不安そうにお母さんの顔を見上げていた子どもたちが、です。
しかし、楽しいために、興奮状態が続いていて、1日何を学んだのか、混沌とした状態で、おうちに帰っている子どもたちもいます。水曜日から解決策を一部実施し始めました。ちょっと時間がかかる場合もありますので、面談の折にゆっくり相談申し上げたいと考えています。
この1週間、みなさん、本当にご苦労さまでした。明日から、2日間休みです。来週からは通常時間となり、教科の授業も本格的に始まります。