【コーディネーター室便り】生活科・国語・算数の授業風景


 しばらくご無沙汰いたしました。「コーディネーター室便り」「学校通信」を再開します。五月も半ばになり、一年生たちも、だいぶ学び方や学校生活が分かってきたようです。(ただし、数人を除きますが。・・・でも、この数人も大変な知的好奇心と先行知識を持っています。しだいに落ち着いてくるでしょう。)
 さて、毎日、学びの打ち合わせと振り返りを教師諸君と行いながらやっていますが、先週から今週は、子どもたちも学びになれてきたせいですが、書きたいことが実にたくさんあって、困っています。中から選んで「コーディネーター室便り」を書きます。

●「合っている」ことが大事か、「理由」や「根拠」が大事か、どちらでしょう
昼過ぎ、子どもたちが、よく日の当たる花壇のところや、校舎の影になっていてあまり日のあたらないところで、青い箱のようなものをもって、なにやらやっています。なにをしているのでしょうか。
今日は、水曜日(5/13)。三時間目の1Cの「生活」の授業を担当しているのは安部さんです。テーマは「ひとつぶのたねから」、「アサガオ」の種をまいて花を咲かそうという学びの始まりです。
「学習指導要領」は、生活科の「目標」の一つを次のように定めています。「自分と身近な動物や植物などの自然とのかかわりに関心をもち、自然のすばらしさに気付き、自然を大切にしたり、自分たちの遊びや生活を工夫したりすることができるようにする。」
いま、そのための学びが始まったわけですな。
ホワイトボードには、次のようなことが書いてあります。
�@いつごろ芽が出るか
�Aいつごろ花が咲くか
�B上手に育てるには
話し合いが行われています。Causationから考えているようですぞ。
子どもたちの意見は「なんで水が必要なんでしょう」「枯れちゃうからだよ。」「土が乾いちゃうからだよ。」大きく分けるとこの二つに分かれるようですな。
安部さんが言います。「アサガオがうまく育つためには、水のほかに何かないかな。」
子どもたちが言います。「お日様に当てないと育たないよ。」「光が必要なんだよ。」
安部さんが言います。「なんで光が必要なのかな。」
子どもたちが言います。「光がないと枯れてしまうから。」「光がないと大きく育たないから。」
ある子どもが言います。「日陰でも育つよ。」すると、ある子どもが言います。「光がないと大きく育たないよ。」すると先の子どもが言います。「ぜったい、日陰でも育つ!」すると、別の子どもが言います。「何で決め付けるの。やってみなければわからないよ。」
というわけで、一人ひとりが、アサガオの種を植え、水を入れたペットボトルを取り付けたブルーの箱を持って、自分たちの仮説が正しいかどうかを検証するために、昼過ぎに花壇の周辺で実験の用意をしていた、とこういうわけですな。
これは、五年生の理科で学ぶ「植物の発芽、成長、結実」に直結し、さらには、六年生の理科で学ぶ「光合成」につながっていきます。
ところで、この学びには、指導要領の「生活」の「目標」をはるかに超えた、たいへん面白いことがあります。それは、子どもたちが自分たちの仮説を単に述べているだけではなく、その理由を説明しているところです。「仮説」は、単にそれだけだと、実験や観察の結果、「合ってた」「外れた」ということで終わってしまいます。これだと、ほとんど意味がありません。合っていようと外れていようと、そんなことはたいした問題じゃないんですぞ。
大事なことは、その「理由」や「根拠」を述べることなんです。「仮説」とともにその「理由」や「根拠」も考えて述べるからこそ、子どもたちの考えるプロセスの中で、どこが正しくて、どこが間違っていたか、どう考えたらよかったのか、ほかにもっと考え方や方法がなかったのかという振り返りができるんですぞ。そして、そういう振り返りこそが、子どもたちの思考力、わけても、概念的で批判的な思考力を高めていくんですぞ。「▲は●だ」という知識、たとえば、「カブトムシは昆虫である」という知識はもちろん大事なす知識です。しかし、「なぜカブトムシは昆虫なのか」「なぜクモは昆虫ではなく、カブトムシが昆虫なのか」「昆虫とはどのようなものか」「どのように昆虫が生まれたのか」などの知識はもっと重要です。さらには、こういうふうに考えることのできる力は、もっともっと、もっと重要です。今、子どもたちは、一年生にして、そういう学びを行っているんですぞ。そういう力を付けているんですぞ。

●国語の学びの中で、子どもたちがどう成長していくか、楽しみです
「○○君、今日の国語でどんなことやったの?」と私が尋ねると、○○君は、「トリのね、くちばしの形についてだよ。」「どんな鳥が出てきたの?」「キツツキとね、オウムとね、ハチドリだったよ。」即座に答えてくれました。1Aの国語の三島さんの授業の後の話です。今日から「くちばし」の授業が始まったんです。
 この授業の目的は、「ものの形の特徴やしくみは、その働きや役割と関係している」ということを理解することです。Conceptsでは、FormとFunctionの関係、ひいては、ChangeやConnectionを通して、生物の種と環境との関係や進化についての理解を深め、教科融合のテーマで人類にとっての共有物である知識の一つ、「How the world works」についての知識を子どもたちが作り上げていくことにもつながります。
 もちろん国語の授業でもありますから、文字、表記法、語彙力、言葉の構造化も同時にやっていますが。
今日(5/13)の国語の学びは、まず「くちばし」の通読です。「今日は何についての文章を読んだの?」という問いと「どんなトリが出てきたのかな?」という問いに対する子どもたちの回答から、今日は、この文章の主題「トリのくちばしのかたちは鳥の種類によって違う」ということと、「キツツキ」「オウム」「ハチドリ」の「くちばしの違い」については、全員理解できたと考えます。(一人、ちょっとあやしい人がいましたが。後で、尋ねてみたら大丈夫でした。)
 明日(5/14)と明後日(5/15)は、さらに、別の文章を使い、Conceptsの中のFormとFunctionを用いて「くちばし」の形と役割の関係を理解していきます。保護者の皆様、くれぐれも先回りして教えないでくださいね。教えてしまうと、「内容」は分かっても、Conceptsを使って、本当に大事な知識、たとえば、「ものの形の特徴やしくみは、その働きや役割と関係している」や「生物の種と環境との関係や進化」について、子どもたち自身が考えて理解する能力や、Conceptsを他の領域でも使って、それらを理解する能力をうまく育めなくなりますぞ。
 まあ、そうは言っても、使っている文章には、「まとめ」の段落がありませんので、来週からの国語の授業は探究型になりますが、大変面白い方向に進んでいきますぞ。「ほかの鳥では、くちばしの形と働きはどうなのか」「くちばしだけでなく羽の形と働きはどうなんだろうか」「トリだけではなく、ウサギは、ゾウは・・・?」「生き物の体のそれぞれの部分の形と、生活している場所とは何か関係があるのだろうか?」「どのようにしてこんな形になってきたんだろう?」(一年生ですからこんな言葉は使わないのですが、言わんとするだろうことは、大体こんなところでしょうな)・・・・きっと、さまざまな探究がグループワークで行われるんでしょう。
 ただ、もう一度、繰り返します。教えないでください。一緒に考えることは結構ですが。
 しかし、この国語の学びの中で、子どもたちがどう変化していくか、たいへん楽しみです。

●算数で、じゃんけん?
金曜日の1Bの鈴木さんの算数の授業です。子どもたちは、夢中になって、ジャンケンしてオハジキを取り合っています。なにをしているのでしょうか。
ちょっと、話が迂回しますが、つぎの問題は、三年生で出てくる応用問題です。

鉛筆が3ダースあります。これを8人で分けたら、何本ずつに分けられますか。また、何本あまりますか。

式は次のようになりますよね。

12本×3ダース=36本  36本÷8人=4本・・・4本


「いきなり、何の話?」とお思いになる方々もいらっしゃると思います。じつは、こういう応用問題の苦手な子どもたちは、最終的な答え、つまり、「1人4本ずつ、あまりは、4本」を出す前に、もう一段階作業が必要であること、つまり、「12本×3ダース=36本」という作業をしなければならないことを見失っているんですな。つまり、問題を解くのに必要な条件は、すべて問題文のうちに備わっており、式は一つだけで解けると信じているんです。問題は、二段階で解くべきであり、全体の本数を求めてから、次に、8人で分けるとどうなるかを算出する式を立てるということが、スッと理解できないんです。
 思考というのは、問題や対象に対する作用であるとともに、プロセスであって、そのプロセスの、どこまでやれて、どこでつまづいたかをきちんと見て、評価してあげないと、子どもたちは、自分の思考に自信を持つことができません。ひどい場合は、「思考なんかどうでもいい、答えさえあってればいいじゃん」という発想に陥ってしまうこともあります。これじゃ、ちょっと困ってしまいます。その点で、テキストや授業は、大丈夫なのかなという不安が生じます。
 まず、算数の教科書を見てみましょう。



これは、日本の一年生の算数の教科書です。
つぎの教科書は、イギリスの一年生の算数の教科書です。


 違いが分かりますよね。
日本の教科書は、スキルを習得することを目的にしています。
イギリスの教科書は、実際にやってみて、考え、分析して、パターン化するという思考のプロセスを子どもたち自身がたどっていくことを目的にしています。その場合、子どもたちは、説明を聞くことより、自ら何かを実践して考えていくという能動的な姿勢が必要ですな。
今、ジョンが横にいて、「キタサンは、気づかないかもしれないけれど、実は、この文章は韻を踏んでいるので、たいへん頭に入りやすいデス。マルデ、ポエムノヨウデス。」といっています。
ジョンは、続けます。「日本の教科書なら、テストの点数は、取れるかもシレナイネ。デモ、考エルホウハ、チョット、ダメネ。」
開智望の算数は、イギリスのテキストの要素も取り入れようと考えています。
それで、「ジャンケン」の話に戻ります。子どもたちは、ペアワークをしています。「5」という数が、どうできているのか、「1と4」なのか、「2と3」なのか・・・を考えているんですぞ。それも、すこぶる能動的に。これが、思考力の源になることは言うまでもありません。しかも、「与えられた数字も、実は、さまざまなでき方をしているんだ」という大変重要な知識を、その重要性も含めて理解しているんですぞ。そういう知識を大変強いリアリティーとともに獲得していると、先ほどのような応用問題はいうまでもなく、もっと楽しい問題を考える思考力もついてきます。
先ほどは、野口君と鈴木さんの授業を見ながら雑談していましたが、「キミとワシが、それぞれ10こオハジキを持っていたとしよう。ジャンケンで勝ったら、相手から1こオハジキをもらうとして、キミのほうがワシより12こ多くなったとすると、キミはワシより何回多く勝ったのかね?」「こういう問題も作れますよ。グーで勝ったら1こ、パーで勝ったら2こ、チョキで勝ったら3こもらえるとしましょう。逆に、チョキで負けたら1こ、グーで負けたら2こ、パーで負けたら3こ、相手に渡すことになりますよね。引き分けのときは、オハジキのやりとりはなしとしましょう。5回ジャンケンをしたら、ボクのほうが10こ多くなりました。ボクは、何で何回勝ち、何で何回負け、引き分けは何回だったんでしょう、なんて問題も考えられますよね。」「そうだね、そうなると『場合の数』だよね。高校の『数学A』にもつながるよ。来年くらいはできるかもね。」

●はじめての運動会に向けて
「どうやったら全員が選手になれるか」、「どうやったらうまく二人三脚で走ることができるか」等、子どもたち自身で、疑問を見つけ、考えることで、競技や効果的な競技の仕方を作り上げます。もちろん「一部だけ」ですが。
藤くんと滝川さんが、子どもたちをサポートしながら、子どもたちに企画させたり、考えさせたりしている種目がいくつかあります。一つ紹介いたします。「○人○プラス1脚」です。
子どもたちは、はじめはうまくいきません。藤君や滝川さんは、それを動画に撮っておいて、子どもたちに「振り返り」をさせています。子どもたちは動画を凝視しています。これは、Observingですね。子どもたちは、何かに気づきます。どうしたらうまくいくか、グループごとにディスカッションして、仮説を立ててその理由を述べます。考えたことを実践してみます。また、コケました。それをまた動画に撮り・・・・繰り返して、練り上げていきます。体育でも、Conceptsやskillsを用いた探究をやっているんですな。このようにして、種目・競技の一部を子どもたち自身が主体となって取り組みます。そのなかで、ソシアルスキル、コミュニケーションスキル等を身につけます。また、場所の取り合い、競技の計画等を通して「限られた時間や空間の共有」等の課題を理解していきます。

体育館には、ルーブリックが貼ってあります。ルーブリックは学びの目的であるとともに、子どもたちと教員たちとの間で共有している「評価基準」でもあります。毎日、あるいは、週ごとに、このルーブリックで自己評価をします。もちろん子どもたちだけでなく、教員も自己評価をします。


レベル4・・・動きを工夫しておどれた
レベル3・・・友達となかよくおどれた
レベル2・・・元気で楽しくおどれた
レベル1・・・リズムに乗ってじゅんばんにおどれた





私自身の想定外だったことですが、「○人○プラス1脚」には、「かけざん」が応用されています。教員たちは、体育も「教科融合の探究活動」として取り組んでいるんです。
みんな一生懸命がんばり、レベル4の評価ができるようにしたいですね。
体育館の壁には、チームの作戦のコーナーが設けられていて、そこに子どもたちが書いたポストイットがたくさん貼られています。何とかして勝ちたい。そのために自分の持っている知恵を発揮したい。自分のアイデアをチームのみんなとシェアしたいという強い思いが伝わってきますぞ。ぜひ、「達成感」につなげていきたいと考えています。