【コラム】国際感覚と移動距離は比例する

先日、とある教育セミナーに参加してまいりました。

そこで議論されていたのは、「グローバル人材をどう育てるか」という内容でした。

私は個人的にグローバル人材という言葉に抵抗感を抱いています。

なぜなら、どうしてもグローバル人材というと、グローバル企業に勤めて世界中を駆けまわるエリートの像を思い浮かべてしまうからです。

(私だけかもしれませんが。)

グローバル人材という言葉よりも、私はこれからを生きる子どもたちに国際感覚を身につけてほしいと感じています。


グローバル人材ではなく、国際感覚という概念は、誰もが身につけるべきものとして非常に説得力があるのではないでしょうか。


・さて、国際感覚とは何でしょうか。

時は今から100年以上前、この日本という国には国際感覚を持った若者たちが居ました。

彼らの多くは脱藩浪士と呼ばれました。
ある者は土佐藩、あるものは紀州藩を飛び出していました。

また、ある者は武士階級、別の者は幕臣、そして、商人までがいました。

土佐藩を飛び出した20歳くらいの若者は黒船というとてつもなく大きい恐ろしいものに出会います。

そして、彼の中で何かが変わっていくのでした。

東京の千葉道場で剣術修行をしながら、
(こんなことをしていていいのだろうか?これから自分は何をするべきなのだろうか?)

こうして、心と対話します。

そして、<わからない>という結論に至るのでした。

それから、彼は移動します。徒歩で。

ある時は、幕臣に話を聞きに行き、
ある時は、九州、中国地方も訪れます。

そうして、移動距離がどんどん増えて行き、知識が体系化されていくのです。

そこから、彼は、上士下士という武士の身分制度や、藩という枠組み、そして幕府や朝廷という仕組みに疑問を抱きます。

とうとう彼は、日本人として海軍を作り、外国と渡り合う必要があるというアイディアを構築するのでした。(もちろん、その男の名は坂本龍馬です。)


他の人の話もしたいと思います。


羊飼いの少年の話です。

彼は神父の父を持ちながら「もっと広い世界を知りたい」という探究心を抱き、世界中を旅したのです。

ある時はジプシーの老女に出会い、偶然、賢い王様に出会ったりします。彼は、スペインからエジプトまで旅をします。

色々な出会いから、世界の仕組みを学んでいくのです。

少し羊飼いの少年の学びを紹介したいと思います。

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「問題は、羊たちは毎日新しい道を歩いているということに、気がついていないことだった。
彼らは新しい場所にいることも、季節の変わりさえも知らなかった。彼らが考えることは、食べ物と水のことだけだった。」

「『人は誰でも、その人その人の学び方がある』と少年は独り言を言った。『彼のやり方は僕とは同じではなく、僕のやり方は、彼のやり方と同じではない。でも僕たちは2人とも、自分の運命を探究しているのだ。だからそこもとで僕は彼を尊敬している』


アルケミスト 夢を旅した少年(角川文庫)』より
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サンチャゴという少年は、とうとう目的地に到着します。

彼が身につけたのは、国際感覚だったのではないでしょうか。



坂本龍馬は、移動する中で、これからの日本人はどうあるべきかという思考・そして試行錯誤し続けました。

サンチャゴという少年は、移動する中で、困難を乗り越えながらどうすれば夢を叶えられるのか思考・そして試行錯誤しつづけました。


私が考える国際感覚とは、移動しながら、出会いや対話を通して、思考していくことに他なりません。


・国際感覚の発達を阻むもの


坂本龍馬を取り巻く人々、特に土佐勤労党の中には「刀で外国人を倒せる」という感覚を持った、すなわち国際感覚が欠落した人たちがいました。(もちろん土佐勤労党を侮辱するつもりは毛頭ございません。)

サンチャゴと一緒にいた、羊はただ食べ物と水のことだけを考えていました。
そして、サンチャゴが出会った人々は夢見ることを忘れていました。

同じ場所で同じ人と、同じことをしていれば到底、国際感覚を身につけることはできないでしょう。

ふと、大人になるとルーティンに埋没し、自分の快適空間から出るのがおっくうになりますね。(わたしも夏休みに反省しています。)

時には、過ごす場所を変え、会う人を変え、未知の経験をすることが大事ではないでしょうか。


そして、今回のコラムでお伝えしたかったことは、

心の中に、燃えたぎる熱い「問い」を抱き、なんとしても「答え」が知りたいという強い好奇心を持って、
(この部分はぜひ最後の参考文献をお読みいただければ共感いただけると思います。本文ではあまり触れられていません。)

たくさん移動しながら、様々な出会いを通してだんだんと国際感覚が身についていくのではないか、ということです。




・圧倒的な経験、気づく能力

私達は、未来の子どもたちと向き合う際、まず自分自身が国際感覚を高める必要があると思います。

しかし、テレビを見ながらビール片手にだらだらしていると、土佐勤労党の武士たちのように時代を掴むことができなくなってしまいます。




様々な所に出かけて圧倒的な経験をする。

坂本龍馬が黒船に出会ったように、屋久島の杉を見に行ったり、オーロラを見るのもよいでしょう。

そして、大自然でキャンプをしたり、ヘリコプターにのったり、スカイダイビングなどもいいと思います。


さて、ここで思うのは、日常の中でそうした圧倒的な経験ができないのか?ということです。

たとえば、アップルのロゴもツイッターのロゴも、モナリザ富嶽三十六景も「黄金比」で構成されていると知る。

こうした”気づき”というか知識によって、今までの景色が違った景色に見えることだってあるはずです。(外部刺激による内部条件の変化・屈折)


そこで大事なのは、「おやおや?」「これはなんだ?」とひっかかることですね。

こうした”ひっかかり”をいかに子どもたちに持ってもらうか、探究の準備をしっかりしながら猛暑を乗り切ろうと思った次第です。


<<参考文献など>>

ルビンシテインの発達論における内的条件
http://repository.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/dspace/bitstream/2261/376/1/KJ00000736882.pdf


パウロ・コエーリョアルケミスト 夢を旅した少年 (角川文庫) 』

高城剛『白本』

河合 敦『誰が坂本龍馬をつくったか<誰が坂本龍馬をつくったか> (角川SSC新書)』