●本当の思考力を問う3つの大学入試問題と開智望の探究(ユニット6)

こんにちは、開智望小学校広報担当の野口です。
いつも開智望ブログをご覧いただきありがとうございます。
このブログでは、毎回開智望小学校の教育について紹介しております。

 

・挑戦!本当の思考力を問う3つの大学入試問題

 

zasshi.news.yahoo.co.jp

 

昨日こんなネットニュースを見つけました。

 

2021年度入学希望者からセンター試験が抜本的に改革される予定だ。与えられた選択肢の中からすばやく正解を選ぶマークシート式の入試をやめて、思考力や表現力を問う入試への改革が進むはずである。

 これからの時代を生きる市民には、さまざまな知識だけでなくしっかりした思考力や豊かな表現力を持つことがますます重要になる。

 大学入試でこれらの能力を問えば、思考力や表現力を育てる方向に高校までの教育が変わっていくだろう。では、どうすれば思考力や表現力を大学入試で問えるだろうか? 

 

どうすれば思考力や表現力を小学校段階から育てていけるのか。

 

この問いにヒントを与えてくれるのが国際バカロレアと開智学園で30年にもわたって継続してきた探究学習です。

 

大学教員の1人として、もし私が出題者なら、思考力を問うためにどんな問題を出すかを考えてみた。以下の3問である。

 【第1問】あなたが朝起きたとき、もし異性(男性なら女性、女性なら男性)になっていたら、どのような有利さと不都合が生じるかを述べなさい。そしてその理解にもとづいて、男女共同参画を推進するためにどのような施策が重要かについて考察しなさい。

 【第2問】人はなぜ人を殺してはいけないか、その理由を述べなさい。そして、その理由に照らして、死刑や戦争が容認されている現実について考察しなさい。

 【第3問】日本の未来を左右する重要な課題を3つあげ、それらが他の課題よりも優先されるべき理由を述べなさい。

 

こうした問題に小学校1年生から開智望小学校では探究の時間で取り組んでいます。

(もちろん子どもたちが取り組めるレベルの問題に、子どもたちが取り組めるアプローチの仕方ですが。)

また大学入試までの12年間の教育を構想し、体系的にデザインしています。

 

採点にあたっては、仮定の妥当性(現実的な仮定であること)、論理の一貫性(答案の中で論理矛盾がないこと)、実証性(事実にもとづいていること)、緻密さ(容易に反論できる論理の穴がないこと)、包括性(論点が尽くされていること)などが基本的な評価項目である。

 これらを満たし、さらに出題者が予想しなかった回答であれば、加点をする。このような答案に出合えれば、出題者冥利につきる。

 上記3問はどれも社会的に重要な問題なので、高校教育ではぜひこれらの問題について考える機会を設けてほしい。また、国会議員のみなさんには、ぜひウェブサイトなどで、ご自分の考えを展開していただきたいものだ。

 

 

仮定の妥当性

論理の一貫性

実証性

緻密さ

包括性

 

こうした力を探究でどうやって身に付けていくのか、その一端を少しでも見ていただければ幸いです。

 

・ゴミとは何だろう。資源とは何だろう。

 

探究の授業が開智望小学校には週6時間あります。国語・算数・という授業のように「探究」という名前のついた授業が週に6時間あるのです。

※具体的な時間割について、また学校の概要についてはパンフレットを参照ください。

⇒パンフレット(PCのみ)

https://sgate2.e-manager.jp/book-view/view/bookNum/39/memberNum/0/groupNum/1G

 

[3階部分]

セントラルアイディア:中心にある抽象的な考え方(トピックをこえたもの)

資源は繰り返し利用できる。

 

[2階部分]

キーコンセプト:探究の道具として用いる鍵となる認識深化のための切り口

Connection(ゴミは他のものとどうつながっているのか?)

Change(ゴミはどう変化してきたのか?ゴミはどう変わっていくのか?)

Responsibility(私たちはゴミをへらすために何ができるのか?)

 

[1階部分]

具体的なトピック:教科の領域、教科書的な項目

ゴミとリサイクル

江戸時代の循環型社会

技術の発展とゴミ処理

 

ここで、カギになるのが2階部分のキーコンセプトです。

キーコンセプトについて詳しく知りたい方は開智学園理事長補佐の北村のこちらの論文を参照ください。

ヘーゲルの論理学の判断論に於ける「特殊」の役割
―国際バカロレアのPYP で用いられる概念を認識論的に体系化する準備のために、
「特殊」の役割に注目して判断論を理解する
北村 克郎 1

⇒「開智 北村 ヘーゲル」で検索してみてください!

 

 最初にあげたヤフーニュースの問題1.では、バカロレアの8つのコンセプトのうち、Perspective(視点・視座)が使われており、

問題2.では、Causation(原因・理由)が使われています。

 

一般的な調べ学習では、ゴミを調べてきて発表したり、ゴミ処理場に行って体験するところで学習が終わってしまいます。

しかし、それではゴミ以外のトピックが与えられたときに回答できなくなってしまいます。

 

開智望小学校では4月の学校探検隊という活動ですでに、このキーコンセプトを用いて学習を進めていきます。

1)保育園・幼稚園にあって開智望小学校にはないものは何だろう?保育園・幼稚園

になくて開智望小学校にはあるものは何だろう?

2)小学校はどう変化してきたのか?

3)小学校のために私たちは何ができるのだろう?

 

こうした問い形式に具体化されたキーコンセプトを用いて、探究していくのです。

1)では保育園にはなくて小学校にはあるものとしてエレベーターが出てきました。

昔の学校ではエレベーターはなかったわけですね。そして必要性があって小学校にはエレベーターが設置されている。(でもすべての小学校でエレベーターがあるわけではありませんね。)

 

そして小学校のために私たちができることとして掃除をしていくわけです。

 

4月当初に行った活動が今になってとても活きています。

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2枚の写真は小学校1年生の家庭学習ノートに書かれたゴミのことに関する知識です。

これまでの学校では教科書に答えが載っているので、教科書の内容にあっていればそれが正解だったわけです。

しかし、探究の授業ではゴミに関するそれ以上の知識を体得していきます。

 

ゴミには可燃ごみや不燃ごみ・資源ごみがあり(Formの観点からゴミを捉える)

ゴミは昔からあるものと最近増えてきたものがあり(Changeの観点からゴミを捉える)

ゴミには自然に還るものとそうではないものがある(Connectionの観点からゴミを捉える)

といった流れです。

 

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上のスライドは子どもたちが司会をしながらグループワークで考えていたごみに関する仮説です。

この仮説を実験や調査で明らかにしていくのが探究です。

 

●ここまでのまとめ

 

冒頭のニュースでは今後の大学入試で「思考力」が問われるといわれていました。

その思考力を高めるために小学校から大学までアクティブラーニングという名で調べ学習や体験学習が行われています。

 

しかし、思考する時には一定のフレームワークや道具が必要になるわけですね。

それがキーコンセプト(Form,Funciton,Change,Perspectiveなど)です。

このフレームワークというか思考の道具さえあれば、未知のトピックに出合っても臆することなく包括的に、根拠をともなって、正確な仮定を出していけるのではないでしょうか。

 

 

●ここで問題になること

 

最後に今回は触れられませんが、答えが一つではない問題に取り組む時の最大の弱点が実は存在します。

 

子どもたちが考え合って達した結論や子どもたちが調べた結果が不十分だったり、間違っていたらどうなるでしょうか。

 

教科書によってある程度これまでの教育では解としての知識の妥当性・正当性が担保されていました。

 

しかし、ネット社会の住人である私たちは常に妥当とはいえない子どもたちが身に付けるにふさわしくないレベルの知識に日々出くわしているのです。

 

また、理系分野で、科学的な知識が乏しく、たとえば宇宙の探究では、

 

「春夏秋冬があるのは、夏の方が地球が太陽に近づくから」と誤った知識を持っていた場合、それを正しいと子どもが認識したら危険なのです。

 

他の例でいえばビジネス文脈で「商店街を活性化する方法を考えよう!」

というワークがあるとします。

 

そこでいろいろな調査・分析をして仮説としての打ち手を子どもたちだけで考えられました。そしてある程度成功したとします。

 

自分たちの経験を絶対化して「商店街を活性化する方法は●●である」と安易な一般化をしてしまっては危険ですよね。

 

特に理系分野では知識の正当性・客観性などがより厳密に求められるので、

探究プロセスで「問題状況⇒課題の定式化⇒具体的な事象の分析(仮説・論証を伴う)⇒総合⇒解決・結論付け⇒応用」と進んでいきますが、人類はこれまでその問題に対してどこまで分かっていて、間違いがあるとしたらどんなものだろうか、ということを理解している必要があります。

 

次回以降は、探究学習の危険性をどうやって補っていくのかを

考えていきたいと思います。